エッセイ

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立売り茶屋(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.24掲載)

狩野永徳作「洛中洛外図屏風(びょうぶ)」は上杉謙信が織田信長から贈られた屏風で、京都の町とその周辺が描かれている。 絵は離れて見るものと思っているとこの絵は金雲しか見えない。しかし、近づくと金雲の中から都のにぎわいが聞こえてくる。金閣寺、清...
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夏(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.23掲載)

湘南地方では春の終わりがはっきりわかる。急に風が潮臭くなり、町中に潮風が満ちてくる。海では海水浴場の準備が始まり、7月、梅雨があけきらないうちに海開き。露地物の野菜もおいしくなり始め、魚屋は「生シラスあります」と看板を出す。 夏の気分が高ま...
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付喪神(つくもがみ)絵巻(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.22掲載)

大みそかの大掃除の場面から「付喪神(つくもがみ)絵巻」という物の怪(け)の物語は始まる。人々は春を新しい物で迎えようと古い道具を捨ててしまう。捨てられた道具たちは「長年人間のために働いてきたのに」と人間への復讐(ふくしゅう)のために付喪神(...
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踊るサテュロス・眠る一休(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.18掲載)

「踊るサテュロス」というブロンズ像がある。サテュロスはギリシア神話の酒神バッカスの従者で、この像は酒神をたたえて、酔ってぐるぐる回って踊る青年像だ。左足を大きく蹴(け)り上げて反り返りながらひねったからだの線には緊張感があり、中空を見つめる...
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すしのてんぷら(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.17掲載)

沖縄でアメリカ人に人気のすし屋に行った。子供をつれた家族、友人同士のグループなどアメリカ人でにぎわっていた。彼らにとってはニッポンのファストフード。何品か注文し、デザートを食べさっと引き上げていく。まるでハンバーガーのような食べ方だ。 「握...
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神様の朝ごはん(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.15掲載)

浜降(はまおり)祭と言うお祭りがある。 神奈川県寒川町と茅ヶ崎市の38の神社から神輿(みこし)が浜に担ぎ出され、禊(みそぎ)をする夏のお祭りだ。深夜1時ごろ、あちこちの神社から神輿が海へ向けて出発する。夜明けとともに浜辺に神輿が次々と到着し...
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おばあとテビチ(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.11掲載)

沖縄へスケッチに出かけた。真夏ではなかったが晴天続きで暑さに疲れ、食欲もなくなり、市場の食堂で沖縄そばをすすっていた。沖縄そばは、そば粉ではなく小麦粉で作るコシの無いそばで、骨付き豚が入っていたり、煮た三枚肉やかまぼこがのっていたりする。店...
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イナゴの会(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.10掲載)

O子に「H子とG子がイナゴ(食べつくす)の会を作った」と教えられた。O子は食通で料理上手。O子の料理は独創的で、田芋(沖縄の芋)のから揚げと柿を併せ、クレソンとベーコンで味をつけるなど、思いがけない食材の組み合わせが絶妙な味を生み出す。その...
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エリザベスとピーコ(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.9掲載)

小学生の頃、縁日でヒヨコを買ってもらった。家の中で飼っていたのに、ネコに襲われてしまった。1羽生き残ったピーコも重傷だったが、妹が手当てをし、回復させた。 家族みんなでピーコの回復を喜んだ何週間か後、どういう理由からか、郊外に住む知り合いの...
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またたびの酢漬け(「甘口辛口」新潟日報 2008.9.8掲載)

家族旅行のにぎやかな思い出とともに舌によみがえる味がある。「ままたびの酢漬け」の味だ。 夏か初秋の奥只見へ行ったときのことだ。ドライブインのアユの塩焼き定食に「またたびの酢漬け」が添えられていた。母がカリカリした食感を気に入っておいしいと言...
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