土鍋(「甘口辛口」新潟日報 2002.5.8掲載)

我が家の食器は質素だ。主婦が粗雑なので、割ってもがっかりしない値段のものばかりだ。

それなのに、一週間分の食費と同じ位の(私にとってはかなりの決心が必要な)値段の土鍋を買ってしまった。知人宅の食事会でおしゃれな食卓がうらやましくなったのだ。

それが、思いがけず使い勝手が良い。直径が二十二センチほど。深い皿に耳のような持ち手がついただけの、ふたのない軽い作りで片付けが楽だ。煮物をそのまま食卓にだせる。何を入れてもごちそうに見える。ネギと鶏肉だけの鍋も、三つ葉を散らすと立派なメインディッシュだ。昆布と豆腐…何と上品な湯豆腐だろう。車麩と青菜の鍋、安上がりだ。これなら、食費を節約できる。そんなわけでこの冬、我が家は三日とあけずにこの土鍋を使った。

高級鍋は忙しい。戸棚で眠っている暇はない。今、ようやく春の休暇を取っている。

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